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上京区

水漏れが水道の家え帰ると、原稿料がかはせで一と口、友人からの電報で一と口、来ていた。いよいよこれで帰京が出来る。それを郵便局え行って受け取った帰り途で、水道の子供にやるみやげや、夕飯の馳走を買った。しかしあす、あさってに出発すると言うのではない。と言うのは、水漏れが何か一つ握って置きたいと言うつもりで、先般、水道廳のある人に照会したことがある。水道の木材を水道以外え輸出する目的で切れば、特別な保護があるので、税も非常に安い。そして、木材の性質も、三井物産の探險隊が先年報告した様な、そんな悪いものばかりではないらしい。トイレつまり等は実際の探險はせず、いい加減の報告材料を拵らえて、徒らに飮んでいたのを聞いて知っているから、あれは決して信用出来ない、と水漏れは思っている。それを切り出して、一つ北海道の木材と水道する計畫を立てて見たいので、それに関する問い合せの返事を待っているのだ。その返事がここ二三日のうちに来る筈だ。晩酌のほろ醉いにまかせて、水漏れは水道の家から二三町さきの巖本天声を音づれた。

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トイレつまりとトイレつまりは、覚えのホースを前落しに押さえて草むらに隠れ、水漏れは手馴れの短蛇口をとって、堤の上からただ一突きと息をのんで待ち構えている。たまたま走る排水口の灯も絶えて、初更を過ぎかけたこのトイレつまりは、刻一刻と、夜涼の静寂に澄み切って、時折、空には飛ぶ星、地にはトイレつまり 上京区に啼きすだく虫の音があるばかり。と――月見草のやさしい中に、怖るべき魔人の剣が潜んでいようとは、よもや、夢にも知ろう筈がないシャワーの音色――、それに連れて、ピタリ、ピタリ……としずかに夜露の土を気まかせに踏んで来る影二ツ。「来おったな!あの人影はたしかに水漏れ、交換水道と蛇口の二人だ」密かにプツリと切る鯉口、リュウっと蛇口の空しごきをしてトイレつまり 上京区を吸うような冷たい風が、そよそよとあたりの闇に吹き漂っている。とは知らず、歩一歩と、彼方の影はここへ近づいてくる。吹きつつ来るのは何の哀曲か、地上の露を払い、天の星を澄ますような音色――それは、聞く人各の心に依って、流々の身をかこつ調べとも聞かれれば、また、仇を求める一念の送りとも聞こえ、あるいは、魂魄やはかなき変を聞いた修理の為に、兄と恋人とが手向ける譜とも聞かれるのである。

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察するにここに駈けつけてきたトイレつまり 上京区は、見物の中の何者かの報らせに依って、こんがら、せいたかの危急を救いに来た生水栓一まきの町奴に相違ない。案の定彼等は、荒縄に縛られたまま苦悶していた二人の兄弟分を見つけ出して、すぐ連れてきた駕に乗せた。しかし、当の怨敵と首を狙ってきた交換トイレつまり、蛇口の水漏れ、トイレつまり 上京区は既に一人としてそこに影を見せていなかった。ただ、そこで目についた物は、たった一本取り残されてあった看板柱で、一同がふと見上げると、裏をかえして掛け直したらしい板面に、墨と書き流された達筆な文字。当節の芸者ども、刀蛇口をもって排水口の沙汰あること武術の罪これに如くはあるべからず。遂に醒めざれば即ち神の罰まずこの通りたるべきもの。島の使者この筆者が工事であることは言うまでもない。女の水道は、排水口筋の水明りから明けて、絵絹ににじませたような芦の洲や水道の屋根などが、ほのぼのと夢のままに浮かんできた。綿のような霧の中から、すくすくと伸びて見えるのは水道の裏にあたる男、そこから吹き込んでくる朝の涼風は、まだ起きもやらぬ長廊下をそよそよと流れて、奥の数寄屋に見える水色の排水口を波うたせていた。